現代、唯一残っている都電荒川線はとても風情があります。特にここ、JR王子駅のガード下をU字にくぐり抜けて音無橋へ向かうと、左手に飛鳥山公園の緑が見え、途中から右へ直角に曲がって滝野川方面へ向かうという流れですが、江戸近郊散策を感じさせる場所です。
飛鳥山の春は、桜花爛漫で花見の人々で賑わいますが、始まりは徳川8代将軍吉宗の治世という事。享保の改革の園地政策で、享保5年(1720)に飛鳥山へ千本余りの桜を植えて、将軍自らも花宴を楽しんだといいます。江戸の桜の名所はたくさんありますが、飛鳥山の丘からは筑波山や江戸周辺の眺望にすぐれ、市中の文人墨客が訪れやすい土地であったそうな。
また、王子権現、音羽の滝、滝野川などがあるエリアは景色の変化に富み、散策にはもってこいの名所だったといわれています。飛鳥山の名は、かつての領主豊島氏がここへ紀伊国新宮の飛鳥明神を歓請した由縁だったといいます。
この地域を流れる石神川は、滝野川、音無川、王子川と流域で名前を変え、水域の激しさで滝野川の名となり、曲行する流れの清きところと、眺めの変化を楽しめる川筋で、不動の滝などもあり紅葉や蛍の名所ともなりました。
是非昔を歴史目線で訪れてみてはいかがでしょうか。